気がつくと、かいじゅうはオリの中にいました。
 あたりは暗く、見まわしてみてもだれもいません。かいじゅうが住むどうくつの中ではないのは明らかでした。

「ここはどこ? だれかいないの?」

 かいじゅうは心細くてたまらなくなり、大きな声を上げます。すると、しばらくしてカベの一部が明るくなり、そこからだれかが入ってきました。
 かいじゅうはこわくなって体をぎゅっとちぢめます。
 その手に持った明かりにてらされたのは、山で会った人間たちだったからです。

「気がついたのか」

 あごひげを生やした人間が、かいじゅうをじっと見つめながら言います。

「これからお前には、わがサーカスではたらいてもらう」
「サーカスって?」

 かいじゅうは、サーカスというものがどういうものか知らなかったので、思わずたずねました。
 すると、人間は答えます。

「芸をやって、お客さまを楽しませるものだ。お前はすぐに人気者になれるよ」
「人気者に!?」

 それは、とてもすばらしいことのように、かいじゅうには聞こえました。人気者になれば、もうひとりぼっちではなくなり、友だちもいっぱいできると思ったからです。

「それなら、ぼく、やるよ」

 かいじゅうがそう答えると、人間はまんぞくそうにうなずきます。
 こうして、かいじゅうのサーカスでの新しい生活が始まりました。

もどる つぎ