「イーストのご機嫌をうかがうのさ」
その人は得意気に言ってから、少し照れたように笑った。言語は違ったが、私が憧れ、弟子入りを志願した師が口にしたのと同じ言葉だった。
最初は正直、やかましい客だとしか思っていなかった。けれども住み慣れた土地から出たこともなく、ただひたすらにパンを作り続けてきたというその人の実直さは、どこか傲慢で固くなっていた私の心を砕いた。
やる気がない奴に後を継がせるわけにはいかない、と残念さを隠せない顔でぼやいていたが、人生なんてわからないものだよ。貴方の残したレシピから作ったパンをよく買いに来る彼も、貴方の偉大さにようやく気づいたみたいだからね。
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